弥生織りの会 : 織り機の復元
弥生時代の織り機を復元するために
 ・同時代の他の遺跡から出土している織り機の部品を参考にする
 ・古代中国の出土品に表わされている織りの様子を参考にする
 ・アジアで伝承された織りの技術を参照する
などの学習を行っています。
弥生時代には、輪状式の原始的な織り機が使われていたと推定し、この方式の織り機を再現しました。
根拠となる発掘部品
下之郷遺跡で出土した織り機の部品は、緯打具だけですが、国内の他遺跡より同時代の
織り機部品が出土しています。

 ・経送具(たておくりぐ)
   布送具の向こう側にあり、織り手の足で突っ張る具
 ・緯打具(よこうちぐ)
   経糸(たていと)の間に入れた緯糸(よこいと)を打ち込む具
 ・布送具(ぬのおくりぐ)
   布を挟んで、腰当てで腰に固定する具
古代中国の青銅器にみる織り機
中国雲南省の石寨山古墓・李家山古墓群は、前漢時代に並行する時期に造営された墓で、大量の青銅器が発見されています。このなかに原始織り機を表現した貯貝器があります。
貯貝器上の人形は、腰に帯をめぐらせ、足で経糸(たていと)を張り、緯打具を操作している様子が見てとれます。同時期の日本の弥生時代にも同じような織り技術が存在していたことが推測されます。


参考文献
石寨山:中国青銅器全集編輯委員会『中国青銅器全集』第14巻、文物出版社、1993年
李家山:雲南省文物考古研究所ほか『江川李家山−第二次発掘報告』文物出版社、2007年
アジアの原始手織り機の調査
稲作をはじめとする生産技術は、中国大陸・朝鮮半島から日本に伝わっており、織り物の技術も同じようなルートで伝わってきたと考えられます。これらの技術はアジアの先住民の生活文化にも伝承されています。

アジアの織り機
アジアには、直状式と輪状式という、大きく2つの方式の腰機(こしばた)があります。
北海道・樺太アイヌは、直状式の腰機で、織り上がった布を布巻具に巻きながら、織り手が前へ進みます。
一方、台湾や海南島、東南アジアでは、輪状式の腰機が現存します。
布送具と経送具の間に経糸(たていと)を輪状にかけ、織り上がった布は、全体を回して送るので、
織り手の座る位置は変わりません。


台湾先住民が使っていた腰機


経糸を輪状にかける    
⇒織り上がった布を送る ⇒ 輪状の布ができる

アイヌが使っていた腰機

「注:経巻具はなく、向こう側の
経糸は杭に固定する」

経糸の両端を固定する    
⇒織り上がった布を巻き取る ⇒ 長方形の布ができる
参考文献
杉山寿栄男『日本原始繊維工芸史』雄山閣出版、1942年
東村純子『考古学からみた古代日本の紡織』六一書房、2011年


アジアの織り機

現在でも東南アジアの地方へ
行くと輪状式腰機が使われています

インドネシア トラジャ村の腰機
 (立石 トラジャ村にて撮影)

 ベトナム タ・オイ族の腰機
 (「Vietnum Museum of Ethnology」より)
復元した織り機
他の遺跡の出土品、古代中国での織り機の様子、古い歴史を引き継ぐ先住民の織り機などから考察すると、
下之郷にいた弥生人は輪状式の腰機を使っていたと推定されます。
そうして、出土した機織り具をもとに、同形同大の機織り具を復元製作しました。
特に、布送具のかみ合わせ部分は、布がきっちり挟めるかどうかが重要なポイントでとなります。
大工さんと相談しながら慎重に調整しましたが、弥生の人たちはどうしていたのでしょうか?


部品の製作

復元した輪状経保持式腰機

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